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下刈りの目的、必要期間、実施季節

下刈りの目的

 皆伐して地面が満度に光を受けると、陽性の植物がいち早く進入して繁茂します。夏に高温多湿となる日本では陽性植物の繁茂が著しいため、植栽木の生存を保証し、成長を助け、形質劣化を防ぐためには下刈りは不可欠です。

下刈りについて

苗木はその樹木の生育に必要な明るさの場所に植栽されますが、その明るさは草本類や他の樹種にとっても好適な生育環境です。下刈りせずにそのまま放っておくと植栽木の生育が妨げられ、生存すらできなくなることが多いのです。
 除草剤を使用することも広義の下刈り作業に入ります。ササ生地など除草剤の使用を必要とするときは、専門家や経験者の指導を得ることが望ましく、できる限り最小の使用で最大の効果をあげることが必要です。

下刈りの必要期間

 土壌条件のよい場所では短期決戦型となり、スギやヒノキで下刈り期間は5年ぐらいで、2、3年目または2~4年目は年に2回の下刈りが必要となります。

 一方、土壌条件の落ちるところでは下刈り期間は10年近くかかりますが、下刈りは年に1回で、後半は隔年でよい場合もあります。また、一つの林分(周辺に比べて樹種の構成や林齢などが同じようなひとまとまりの森林)でも、斜面の上と下では下刈りの頻度と期間が異なることに注意が必要です。

 植栽後、最初の生育シーズンはベニバナボロギクのような1年生植物が主体で、ススキや広葉樹のように植栽木にかぶさるようなことはないので、植栽木への影響が懸念される部分だけ下刈りする程度でよいでしょう。むやみに下刈りすると、やがて勢力をふるうススキなどの多年生草本の生長を早めることになります。

 2年目から4、5年目までは最も下刈りの必要な期間で、この時期は土壌条件のよい場所では年に2回、土壌条件が落ちる場所では年1回の下刈りが必要です。もともと広葉樹林であったところは広葉樹の萌芽が盛んで、その分下刈りを多く要します。

 植栽林の周りだけを下刈りするのを「坪刈り」、植栽列に沿って下刈りするのを「筋刈り」といいます。
 それらは最初は省力にはなりますが、3年もすると周りからかぶさってきてその下刈り労力は大変なので、最初の年に必要な部分だけを下刈りするようにして、それ以降は全面を刈る「全刈り」にした方が作業が楽であるとともに、植栽木の成長もよく、早く下刈りを卒業できます。

下刈りの実施時期

下刈り季節は、年1回の場合は7月下旬から8月上旬にかけて、年2回の場合は6月下旬から7月上旬にかけてと8月中旬です

真夏に行う理由

 この時期が被圧のピークに近くなること、加えて雑草木が前年の生産の蓄積(主に根に蓄積)を使い果たし、かつ来春の成長に備えての今年の生産の蓄積はまだ始まっていないからです。前年の蓄積が残っていたり今年の蓄積が始まっていると、下刈り後の再生力が強いので、この時期に下刈りを行うと効果があるのです。
 7月頃からの被圧は植栽木に大きなマイナス影響を与えることと、雑草木の再生力のポテンシャルが一番少なくなった頃をねらうことが、この時期が下刈り適期である理由です。
 一方、この季節の炎天下での下刈り作業は非常に厳しいものとなります。皆伐地では、できることなら早朝から初めて9時頃には終わるように時間の段取りを工夫するとよいでしょう。
 

非皆伐施業の場合

下刈りは少なくてすみ、観察しながら必要と思われる時に必要な部分を下刈りすればよいでしょう。日陰での作業となるため、林内の作業は楽であるばかりでなく、雑草植物も細長く、柔らかくて刈りやすくなります。
 

下刈りの道具

 手刈りの作業はカマを使います。カマには柄が短く刃も小さいものと、柄が長く刃も大きなものとがあります。柄が長いものは柄を振りかざして雑草木を切断するので、ある程度手応えのあるものでも切断でき、立った姿勢で作業ができるために疲れも少ないことから、作業の主流は長柄のカマとなります。
 なお、長柄のカマは植栽木をはねる危険性があるので、植栽木の周辺は柄を短く持ってていねいに刈るか、長柄のカマで植栽木に危険がないようにひととおり刈った後、植栽木の周りに刈り残された雑草木を、柄の短いカマでていねいに刈るとよいでしょう。
刈払機を使うと作業効率は高くなります。 しかしこの作業も、短い柄のカマを用いた手刈りの作業に比べて細かい作業は難しく、植栽木の周りの植生は刈り残されやすくなります。それらをきれいに刈ろうとすると植栽木を間違って伐ってしまいかねません。
 刈り残されたところからつる植物が繁茂しやすいので、まず刈払機で作業してから、柄の短いカマを使って手刈りで仕上げることが望ましいでしょう。
 なお、刈払機は石(岩)の多い林地では避けた方がよいでしょう。
 
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